自社製品を輸出する場合に最初に調査すべきことは?

自社製品を輸出する場合に最初に調査すべきことは輸出する商品が                      輸出対象国が定めた輸入規制に該当するかどうか、                                            また、同国が定めた認証品に該当するかどうかです。                                これを怠ると対象国で輸入時に通関できません。                                 認証品に該当するにかかわらず、対象国で必要とされる認証を取得しないとで同国内で             販売できないことがあります。                                                     認証が必須となれば、事前にその手続きとその取得費用を確認することが必要です。

支援事例紹介

具体的に私がある産業機械の製造業者を支援している事例を紹介したいと思います。                 この会社は私が前職で取引をしたことのある業者さんです。                            この会社で製造している製品の一つに圧力容器を使用する装置があり、                     東南アジア向けに輸出を考えています。
将来日本国内において国内需要の減少が予想されるので、それをカバーする為に、                       今後需要の拡大が見込める東南アジア向けに販売する計画です。                                            対象国は東南アジアのタイ、マレーシア、ベトナム、インドネシア、シンガポールです。              これらの国々に対して自社が製造してる圧力容器を輸出するにあたり、                       対象国の法規制について調べてもらいたいとのことでした。                                                       因みに、日本では厚労省が労働安全衛生法でこの圧力容器に対して以下の通り規定しています。
「製品の使用圧力が0.20MPa以上で、製品の内容積が40L以上であること。                  圧力が0.20MPa以上で、40L未満であっても、高さが1000mm以上かつ内径200mmに該当する場合には、    製造業者は耐圧証明する為に日本ボイラー協会の検査を受けること」                                                   海外製の圧力容器を日本に輸入する場合もこの法令に準拠しなければなりません。

 

調査の手順

輸出する対象国にも日本と同じような圧力容器に対して法規制がありますので、                 それを調べることになります。                                       輸出するのにあたり、以下のステップで調べることになります。
【ステップ1】
1)本圧力容器は対象国で輸入規制品に該当するか否か、[i]JETROのHP等で確認します。            2)対象国の輸入通関時に必要とされる[ii]HS Codeを通関業者経由事前に調べます。             HS Codeが判明すれば、対象国で問題なく輸入通関できることになります。
【ステップ2】
輸入規制品になっていない場合であっても、対象国の国家規格品(認証)対象品に               なっていないか、[iii]JETROのHP等で確認する必要があります。                               例えば、国家規格として、タイではタイ工業規格(Thailand Industrial Standards)、              マレーシアでは、マレーシア規格(Malaysia Standard)があり、                          ベトナムでは、TCVN、インドネシアでは、SNI(Standard National Indonesia)があります。            認証対象品かどうか判明しない場合は、認証を管轄している対象国の当該規格管理局へ確認します。
【ステップ3】
日本の労働安全衛生法と同様の対象国の法令を確認します。                            場合によっては、対象国の労働安全監督局に確認します。                             例えば、圧力容器はマレーシアではDOSH(Department of Occupational Safety and Health, in Ministry of Manpower, Malaysia/労働安全衛生局)、                                    シンガポールでは人材開発省(Ministry of Manpower)下の労働安全衛生局の認証が必要になります                                                  タイでは[iv]ASMEですが、日本のボイラー協会が検査した製品はその使用が認められています。                                               ベトナムでは、圧力容器は国家規格に該当する製品になっており、                      国家安全規則ではASMEに準拠するよう規定されています。                                このように対象国の法令を調査し、輸出する製品が対象国の法令に                      準拠するかどうかを確認しなければなりません。                              対象国の規格や規定数値と異なる場合は                                  改めてそれに準拠した製品を輸出しなければなりません。
【ステップ4】
1)実際のところ、日本のボイラー協会が検査し合格した製品が対象国で                    認められるかどうか確認することも重要です。                                そこで、上述した対象国の労働安全衛生局へ確認します。
2)この様な手順で調査する一方で、実際に日本の圧力容器の証明書を取得している製品で            問題 ないかどうかについて、圧力容器を既に対象国に輸出している同業他社へ確認します。
3)圧力容器を検査する日本の第3者検査機関から対象国での日本製品に関する情報を              入手することも出来ると思います。

このような手順を経て、裏付けを取りながら、調査・確認作業を進めてゆくことになります。

その他の規制について

【食品、医薬品、化粧品の製品認証・販売許可(FDA)】
食品、医薬品、化粧品の場合はほとんどの国で販売許可が無ければ販売することができません。          日本では、薬機法によって、医薬品・医薬部外品・化粧品・医療用具の販売は規制されています。        輸入品も同様で取扱い資格を持っていないと販売できません。                        アメリカでは政府機関であるFDA(Food and Drug Administration)の認証を取得しなければ、        アメリカでの販売は出来ません。                                     因みに、FDAはアメリカの認証ですが、他の国でもこのような認証を                     通称FDAと呼ばれることがあります。                                         食品、医薬品、化粧品などの認証は多くの国で必要になりますが、                      その認証制度は国によって異なるので、事前調査は欠かせません。
【CEマーキング】
輸出取引先の相手がEU加盟国の場合には、EU加盟国において販売される                    対象製品(多くの工業製品が対象)が、EUの基準に適合していることを示す                 「CEマーク」を表示することが義務となっています。                            CEマークは分野別のEU指令や規則で定められた製品の安全性、有害物質使用制限、環境性能基準等に       適合していることを、製造業者(もしくは輸入者)が自己宣言するものです。                    自社で自己宣言を行うものであって、                                   政府機関、認証機関等から認証を取得するものではありません。                       EU加盟国で販売する場合は、対象製品がCEマーキングの対象となっているかを確認することが必須です。

まとめ

私が支援している事例を参考として紹介しました。海外取引は国内取引と違い、                相手国の法制度によって輸入規制や認証が必要な商品があります。                      これらを事前に調査・確認しておかないと後になって、トラブルの要因になります。              その為にも、事前の調査は必須です。場当たり的な対応を避けて、                       リスクを想定し対応してゆくことが大切です。

[i] JETROのHP
タイのケースでの輸入規制品については以下の通りです。
貿易管理制度 | タイ – アジア – 国・地域別に見る – ジェトロ (jetro.go.jp)
[ii] HSコード
「ハーモナイズ・システム」(Harmonized System)の略称で、                       商品の性質や用途、材料などを基準に、8桁からなる数字で分類。                       最初の6桁は「分類番号」で、最後の2桁は「細分類番号」です。                       商品の取引や輸出入手続きに必要な情報です。
[iii] JETROのHP
アジア諸国での規格については以下の通りです。
アジアの標準・規格 | アジア – 国・地域別に見る – ジェトロ (jetro.go.jp)
[iv] ASME
American Society for Mechanical Engineersの略称です。                        ASME規格は機械の製造に関わる材料、設計、製造、検査に至るまで広範に規定された              米国規格ですが、もっとも普及しているものに圧力容器やその配管についての規格群があります。
【参考文献】
中小企業のための海外販路開拓と輸出の実務手引き 尾崎太郎著 アニモ出版

伊皆正俊

伊皆正俊

海外事業加速パートナー

機械の総合商社に約40年間勤務し、海外、国内の法人営業を経験し、海外では韓国、台湾、マレーシア、アメリカ、ドイツ、スウェーデン、イタリアとの取引、イタリア製品をアジア諸国へ販売する3国間取引に従事し、国内外で約 300社との取引実績を有する。アメリカ製品を日本で販売した際に発生したクレームによって数億円と想定されるリコール費用の負担を解決した経験を持つ。長年に亘る海外取引の経験を活かして中小企業事業者向けに海外ビジネスを支援活動中。

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