「2024年度版中小企業白書」9つのポイントとは?           (その1)

中小企業白書とは中小企業庁が中小企業の動向及び中小企業に対して講じた施策の結果及び講じようとする施策を報告書としてまとめたものです。2024年度版が5月に発表されました。今回は主な内容を9のポイントとしてまとめ、2回に分けて説明したいと思います。中小企業の現状と政府の施策を把握し、ビジネスのヒントにして頂ければ幸いです。

1. コロナウィルス感染の影響と対応

2020年以降の新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、政府は緊急事態宣言等による休業要請又は営業時間短縮要請を実施した。その影響を受ける事業者に対して、事業の継続や雇用の維持に向けた緊急的な支援策を実施したことで失業率や倒産件数は比較的低い水準で推移した。

【事業継続・雇用維持に向けた企業の 資金繰り支援や給付金・補助金の利用】

2. 業況と経営課題

2023年は、年末にかけて売上げの好転に一服感が見られたものの、中小企業の業況判断は 高水準で推移し、経済の状況が全体として改善する基調が継続した。中小企業の経営課題の内訳を見ると、売上不振のほか、原材料高や求人難の割合が高い状況であった。

3. 人手不足

1) 売上高が感染症の落ち込みから回復する中で、人手不足が深刻化している。実際のところ、これまで生産年齢人口の減少を補う形で女性・高齢者の就業が進んできたが、足下は下図の通り、有効求職者数より、有効求人数が多く、就業者数の増加が頭打ちとなって、人材の供給制約に直面している状況である。

2)人材確保ができている企業は下図の通り、働きやすい職場環境・制度の整備への取組を進めている。

3)人材の確保に向けて、経営戦略と一体化した人事戦略を策定した上で、職場環境の整備に取り組むことが重要である。人材育成ついては、人材の定着や労働生産性の向上にもつながることが期待される。

4. 賃上げ

物価に見合った賃金の引上げを通じて、需要の拡大につなげる好循環を実現することが重要である。春闘の賃上げ率・最低賃金の改定率は過去最高水準となる。一方で、人材確保の必要性や物価動向を背景に、賃上げの原資となる業績の改善が見られない中で、賃上げを行う企業が増加している。(下図参照)

【人材確保の必要性や物価動向を背景に、業績が改善しない中で賃上げを行う企業が増加】

5. 省力化投資

人手不足への対応策として、採用用等の人材確保に加えて省力化に向けた設備投資も必要であるが、下図の通り、規模の小さな企業ほど省力化投資が進んでおらず、省力化の取組余地が大きい。 また、省力化投資は人手不足緩和だけでなく売上高増加にもつながることが期待される。

6. 労働生産性

日本の経済成長は海外と比べ見劣りする中で、今後は就業者数の減少が本格化する。 国際的に見ても日本の生産性は低く、また、企業規模間での格差も存在している。日本の国際競争力を維持するためには中小企業の生産性の引上げが必要である。下図の通り、日本はOECD加盟国の中で労働生産性が低い。また、企業規模間での格差も存在している。

伊皆正俊

伊皆正俊

海外事業加速パートナー

機械の総合商社に約40年間勤務し、海外、国内の法人営業を経験し、海外では韓国、台湾、マレーシア、アメリカ、ドイツ、スウェーデン、イタリアとの取引、イタリア製品をアジア諸国へ販売する3国間取引に従事し、国内外で約 300社との取引実績を有する。アメリカ製品を日本で販売した際に発生したクレームによって数億円と想定されるリコール費用の負担を解決した経験を持つ。長年に亘る海外取引の経験を活かして中小企業事業者向けに海外ビジネスを支援活動中。

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