「2024年度版中小企業白書」9つのポイントとは?           (その2)

7. 価格転嫁

値上げ原資の確保に向けては、価格転嫁の促進が重要である。下図の通り、価格交渉が可能な取引環境が醸成されつつあるが、コスト増加分を十分に転嫁できておらず、転嫁率向上のための取組強化が課題である。十分な転嫁のためには、適切な価格交渉が重要である。 転嫁に関する協議の実施とともに、 商品・製品の原価構成を把握して交渉を進めることが有効である。

8. 中小企業の成長

  1. 足下では、約9割の中小企業が投資行動に意欲的な経営方針を示している。挑戦意欲のある中小企業は、域内経済の牽引や外需獲得に貢献し、賃上げを可能にする持続的な利益を生み出すような企業へ成長することが期待される。こうした投資行動に意欲的な企業は、日本経済全 体の生産性向上の観点からもプラスの効果があるものと考えられる。
  2. 今は投資行動に積極的でない中小企業も一定数見られるが、刻々と変化する外部環境に対応するためには、小さな取組でも行動していく姿勢が、経営にとっても良い効果を与えるものと考えられる。

9. 中小企業の成長投資

企業の成長には、人への投資(人 育成の取組等)のほかにも、設備投資、M&A、研究開 発投資といった投資行動が有効である可能性がある。 成長に向けては、必要な経営資源を確保し、外部の市場環境にも目を向けながら、 自社にとって最適な成長投資を検討していく戦略が求められる。

まとめ

  1. 2023年は年末にかけて売上げの増加に一服感が見られたものの、中小企業の業況判断は高水準で推移している。
  2. 事業者が直面している課題として、売上高が感染症による落ち込みから回復し、企業の人手不足が深刻化していることが挙げられる。今後の展望として、就業者数の増加が見込めない中で、日本の国際競争力を維持するためには、省力化投資や単価の引上げを通じて、中小企業の生産性を向上させていくことが期待される。
  3. 成長する中小企業の行動を分析すると、企業の成長には、人への投資、設備投資、M&A、研究開発投資といった投資行動が有効である。                                        ※ 尚、同白書の全文につきましては以下URLにてご参照願います。https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2024/PDF/chusho.html

所感

コロナが収束し、景況感が戻ってきましたが、コストの上昇と人手不足が中小企業を悩ませています。

現状では価格転嫁が十分行われていません。 更に、業務改善が十分行われていない状況下で、賃金を上げざるを得ない中小企業の苦境が伺えます。                                          2024年5月に連合から公表された春闘での平均賃上げ率は全体で5.17%で33年ぶりの高水準ですが、      中小企業では4.66%です。大企業と中小企業との間で賃上げ格差が生じています。                                                                             今後とも中小企業は価格転嫁を実現し、賃金を上げていくことになるでしょう。                価格転嫁の為には原価の構成要素を見直し、 顧客に対して費用の上昇を認めてもらうべく            客観なデーターを準備することが必要です。                                            その為には以下を参考にしながら進めていくのも一案です。
価格交渉支援ツール(埼玉県HP)、(中小企業庁HP)
https://www.pref.saitama.lg.jp/a0801/library-info/kakakukoushoutool.html
https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/torihiki/pamflet/kakaku_kosho_handbook.pdf

また、生産性をあげる為の政府の施策として、経産省の令和5年補正予算に含まれる「中小企業省力化投資補助金」があります。これは人材不足が課題となっている企業がIoTやロボットの導入により省人化・省力化を行い、生産性向上を実現するための補助金制度です。補助率は1/2で、従業員数により補助上限額 は以下の通りです。
1)5人以下 1/2以下 200万円 (300万円)
2)6~20人以下 500万円以下 (750万円)
3)21人以上 1.000万円以下 (1,500万円)
※( )の金額は大幅な賃上げを行う場合
https://shoryokuka.smrj.go.jp/

更に、政府は賃上げ上促進税制を強化しています。                                全雇用者の給与等支給額の増加額の最大45%を税額控除できます。                         賃上げを実施した年度に控除しきれなかった金額の5年間の繰越しが可能です。                      添付URLをご参照願います。                                            <ahref=”https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/zeisei/syotokukakudai/chinnagesokushinzeisei2024.pdf”>chinnagesokushinzeisei2024.pdf (meti.go.jp)

このように価格交渉ツールや政府の支援策を活用し、対策を講じて厳しい環境を乗り越えていきたいものです。

伊皆正俊

伊皆正俊

海外事業加速パートナー

機械の総合商社に約40年間勤務し、海外、国内の法人営業を経験し、海外では韓国、台湾、マレーシア、アメリカ、ドイツ、スウェーデン、イタリアとの取引、イタリア製品をアジア諸国へ販売する3国間取引に従事し、国内外で約 300社との取引実績を有する。アメリカ製品を日本で販売した際に発生したクレームによって数億円と想定されるリコール費用の負担を解決した経験を持つ。長年に亘る海外取引の経験を活かして中小企業事業者向けに海外ビジネスを支援活動中。

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