「2023年度わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告」5つのポイントとは?

株式会社国際協力銀行(JBIC)による「2023年度わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告」が公開されています。下記の通りまとめました。今後の事業活動のご参考にして頂ければと思います。尚、調査対象企業は、原則として海外現地法人を3社以上を有するわが国の企業で 534社からの回答です。

 

1.海外比率は昨年度比でほぼ横ばい

わが国製造業の海外事業展開はウクライナ侵攻、米中対立の長期化に伴う地政学リスクの高まりと中国経済の減速傾向等を背景に、2023年度の実績見込みは2022年度と比べて海外生産比率(35.8%)及び海外売上高比率(39.1%)ともにほぼ横ばいで推移する見通しとなっている。

2.1位:インド、2位:ベトナム、3位:中国

有望国ランキングではインドが市場の成長性の期待から他を大きく離し首位を維持する。米中は順位を落とし、ベトナムが初の2位 となる。中国は、 米中対立の長期化・中国経済の減速、国内規制強化等を背景に2年連続で順位を落とし3位に後退。米国は、マーケットとして の評価は高いものの、足元のインフレや労働コストの上昇などが響き、順位が4位に下がった。脱中国の受け皿としての期待が高まるベトナムが初の2位となり、安価な労働力などを背景に日本 企業の生産拠点として評価された点が反映されたものとみられる。

3.サプライチェーンの見直しの一方で、中国依存が継続

米中対立、ウクライナ侵攻等の地政学リスクの高まりを受け、サプライチェーンの原材料調達を見直す動きがみられるものの、代替困難な原材料・部品等の調達先として中国の存在は引き続き大きい。一方、中国国内の規制強化・投資環境の悪化に伴い、中国ビジネスに対する日本企業の不安感は大きく広がり、また、米国による対中規制が強化される中、事業運営への実際の影響も出ている。海外から国内への生産移管は電機・電子など僅かに留まっているものの、円安等の状況を考慮し、国内投資の強化への積極的な姿勢がみられ た。

4.世界的な価格高騰による価格転嫁の動き

世界的な価格高騰で、コスト削減等に取り組む一方、価格転嫁の動きも進みつつある 約9割の企業が、エネルギー、材料、部品などの世界的な価格高騰の影響を受けていると回答している。また、程度の差はあれ約7割の企業が価格転嫁を実施していることが分かったが、取引先からの理解が得られないことや、他社との競合があること、などの理由で価格転嫁を進められない企業もみられる。

5.脱炭素への取り組みは大企業中心に進展

約65%の企業において脱炭素への取り組みが順調に進捗していることがわかった。各企業において、脱炭素への取り組みには、納入先 からの要請、競合先の取り組み状況、また脱炭素技術動向などを考慮に入れ取り組んでいるが、企業規模や業界によって進捗に差もみられる。

まとめ

わが国製造業の海外事業展開については、今年は昨年と比べて海外比率は変わらない状況です。市場の成長性が高いインド、東南アジアではベトナムが注目ということですね。中国は昨今の不動産が絡む不良債権問題に端を発した景気後退で人気に陰りが出てきています。コロナ禍で騒がれたサプライチェインの問題への対策は中々進んでいない様子が伺えます。                                               尚、同報告の全文は以下URLをご参照ください。            https://www.jbic.go.jp/ja/information/press/press-2023/image/000005619.pdf

伊皆正俊

伊皆正俊

海外事業加速パートナー

機械の総合商社に約40年間勤務し、海外、国内の法人営業を経験し、海外では韓国、台湾、マレーシア、アメリカ、ドイツ、スウェーデン、イタリアとの取引、イタリア製品をアジア諸国へ販売する3国間取引に従事し、国内外で約 300社との取引実績を有する。アメリカ製品を日本で販売した際に発生したクレームによって数億円と想定されるリコール費用の負担を解決した経験を持つ。長年に亘る海外取引の経験を活かして中小企業事業者向けに海外ビジネスを支援活動中。

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