輸出ビジネスを成功に導く3つの事例とは?

今回は私が前職で産業機械の商社マンとして経験した事例を紹介させて頂きます。今後の輸出ビジネスを始めるご参考にしていただければ幸いです。

事例その1:市場調査の重要性

私が台湾向けに掘削機(建設機械)を販売したケースです。当時自社と取引があった掘削機を製作している中小企業があり、海外への販路開拓の依頼を受けました。このメーカ―の機械は従来のドリルで穴をあけて土壌を掘削する機械とは異なり、スコップのように土壌をまるごと掘っていく方式で掘削効率が高く、他社にはない特徴がありました。当時、調査の結果、台湾の首都台北で地下鉄工事計画がありました。この建設に使用される掘削機械のニーズを見つけることができました。台湾の土壌は比較的柔らかいので、この掘削機の方が土壌を掘ってゆく効率がよいことが判明しました。建設工期を3割程度短縮でき費用削減の効果がありました。当時台湾には同じような構造の機械はありませんでした。最初に、国営の建設会社が行う高層ビル建設での採用を図り、問題なく工事を完了させることができました。本工事での実績と信頼を得て、民間の建設会社へ展開していくことができました。トータルで50基を販売することができ、約20億円を販売することができました。

事例その2:代理店設置の考え方

あるマレーシアの販売会社から国営のセメント会社向けに原料の運搬に使用されるコンベアベルトの引き合いがありました。日本の著名なゴムメーカーへ依頼し、製品を供給してもらいました。その販売店はそのセメント会社に特別な人脈を持っていることが分かり、順調に販売を伸ばすことができました。このように現地の販売会社の中にはある特定の顧客に対して強い人脈を有しているケースがあります。代理店の力を見極めて、顧客によって代理店を決めてゆくことも必要で、必ずしも販売先国の全地域の独占販売権を与える必要はありません。状況によっては、販売先国において特定の顧客や地域に対してそれぞれ別な代理店を持つことも有効です。

上述の話とは逆の立場になったケースがありました。ある精密機械メーカーから台湾向け販売代理店の話がきました。このメーカーは台湾の販売代理店を台湾の北部の顧客をある会社へ、南部を私の会社に設定しました。当時、顧客からの引き合いが重複したことがあり、やりずらさを感じていました。しかし、このメーカーは販路開拓する上で、どの会社がどの地域や顧客に強いのかを見極めて販売代理店を設定していたのでした。

事例その3:相手国の事情

あるプラントメーカー経由でトルクメニスタン向けに肥料プラントに使用されるイタリア製の窒素発生設備を納入しました。いわゆる3国間貿易です。本設備を無事納入し、イタリアメーカーのスーパーバイザーを派遣し、据付後の運転調整も完了しました。その後エンドユーザーへのプラント引き渡しに向けた試運転中にこの設備に使用されていたコンプレッサーに不具合が発生し、運転できなくなりました。急遽、顧客よりこのメーカーのスーパーバイザーを派遣してもらいたいとの要請がありました。丁度、この時期がヨーロッパメーカーが夏季休暇中であることは知っていました。このコンプレッサーメーカーも夏季休暇中で、連絡が取れない状況でした。顧客へこの状況を説明したものの、顧客からプラントの引き渡しが遅れることによるペナルティを課させる恐れがあり、再度強い要請がありました。あらゆる手を尽くしましたが、連絡が取れませんでした。その日はクライアントと深夜まで議論を重ねた結果、夏季休暇中ではスーパーバイザーを派遣できないとの結論に至りました。やむなく、顧客に現地で別な業者に修復してもらうことにしました。当然なことですが、相手国やその会社の休日日程は事前に頭に入れ、商談に臨むことが必要になります。特に、納期や現地の出張時期を決定する時などは相手国の休暇を考慮することが必要です。日本の年末・年始(お正月休暇)の日程で相手国も同様に休暇であることはありません。クリスマス休暇、旧正月等その国の事情を考慮していれば、無用なトラブルを避けることができます。

まとめ

市場調査の仕方、代理店設置の考え方、相手国の事情について、私が経験した事例をもとに説明しました。    今後の事業活動にご参考にして頂ければ幸いです。

 

伊皆正俊

伊皆正俊

海外事業加速パートナー

機械の総合商社に約40年間勤務し、海外、国内の法人営業を経験し、海外では韓国、台湾、マレーシア、アメリカ、ドイツ、スウェーデン、イタリアとの取引、イタリア製品をアジア諸国へ販売する3国間取引に従事し、国内外で約 300社との取引実績を有する。アメリカ製品を日本で販売した際に発生したクレームによって数億円と想定されるリコール費用の負担を解決した経験を持つ。長年に亘る海外取引の経験を活かして中小企業事業者向けに海外ビジネスを支援活動中。

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