中小企業の海外需要の取込み
まず、日本が置かれている現在の環境を見ていきたいと思います。日本の将来は下図の通り、少子高齢化に伴う総人口、生産年齢人口の減少という構造的な問題を抱えています。従って、このまま進んでいくと国内需要は縮小してゆくでしょう。
図-1
他方、下図の通り、アジア諸国を中心とするインドネシア、フィリピン、ベトナム、マレーシアは人口増加によって経済発展し、それにともない海外市場は拡大します。また、環太平洋パートナーシップ(TPP)協定等の経済連携協定の推進を背景に、2国間以上や地域間で物品の関税、サービス、人の移動、投資など幅広い範囲で自由化が進んでゆくでしょう。今後はEUのような自由経済圏を目指して、アジア地域の連携は強固になってゆくと思われます。更に、アジア地域以外の諸国との関係も一層深化していくと考えられます。これを海外輸出ビジネスのチャンスとして捉え、中小企業は事業拡大のために海外需要を取り込むべく、一歩踏み出してゆく必要があります。
図-2
中小企業の海外展開への現状と課題
このような状況が予想される中で、日本の中小企業の海外展開の現状はどうなのでしょうか。下図の通り、海外展開を行っている企業は、全体の18.0%です。海外展開の形態別にみると、「海外直接投資を行っている」企業 が6.6%、「海外に直接輸出している」企業が7.2%です。一方、「海外展開を行っておらず、関心もない」企業は71.3%に上ります。現状で、海外展開を行っている中小企業は全体の約2割の状況です。
図-3
ここで、「海外展開を行っておらず、関心もない」71.3%の企業に焦点をあて、その理由を尋ねてみました。下図の通りです。
図-4
「海外展開に向かない事業である」が57.4%と最も高く、次いで「国内 だけも十分経営できる」(30.4%)、「海外展開にはリスクがある」(22.9%)となっています。一方で、海外展開の予定または関心がある中小企業には海外需要の取り込みができない実状があります。これらの企業にこれまで海外展開を行ってこなかった理由を尋ねたところ、次の図の通り、「人材がいない」が53.1%と最も多く、ついで「販路を確保できない」(48.6%)、「海外にどんな需要があるかわからない」(38.1%)の順となっています。
図-5
これらの課題に対して、解決に向けた具体的な取り組みを策定することが必要です。自社で対応が難しいと思われる場合は、以下の各公共機関の相談窓口に相談するのも一案です。
- ジェトロ(JETRO:独立行政法人日本貿易振興機構) https://www.jetro.go.jp/services/contact.html
70カ所を超える海外事務所ならびに本部(東京)、大阪本部、アジア経済研究所および国内事務所をあわせ約50の国内拠点から成る国内外ネットワークを有し、農林水産物・食品の輸出や中堅・中小企業等の海外展開支援をしています。
- 独立行政法人中小企業基盤整備機構 海外展開に関する相談|中小機構 (smrj.go.jp)
地方自治体や地域の支援機関、他の政府系機関と連携しながら、中小企業者の多岐にわたる課題解決や事業基盤の強化、成長に向けた取り組みを支援しています。海外展開を目指す中小企業に対して、初期の計画段階から進出後のフォローアップまで、幅広い支援メニューでサポートしています。
各地商工会議所は「海外展開イニシアティブ」と称した中小企業の海外展開・国際ビジネス活動の一層の強化に向けて海外展開支援機関の連携・協働を図る枠組みで支援しています。
また、伴走支援が必要な場合は海外取引の専門家に支援を依頼することも出来るでしょう。
まとめ
今後日本の市場は少子高齢化により縮小傾向です。一方で、アジアを中心とする海外市場は広がりをみせています。これを機会として捉え、中小企業は、更なる事業拡大の為、海外需要を取り込むことが必要になります。一方で、現状では、中小企業は海外取引を始める上で抱える課題があります。その課題解決に向けた取り組みが必要です。状況によっては、外部の専門家の力を活用するのも一案です。
次回は「輸出ビジネスの始め方」について、具体的なお話をしたいと思います。
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